味噌と寺院食~精進料理に根づく発酵の知恵~
日本の伝統食文化の中で、静かに、そして深く息づいている「精進料理」。
その中心にはいつも「味噌」があります。
味噌汁はもちろん、味噌だれ、味噌漬け、味噌炒め…
肉も魚も使わない精進料理において、味噌は“味を作る柱”ともいえる存在です。
では、なぜ味噌がこれほどまでに寺院の食に欠かせないのでしょうか?
そこには、仏教の教えと、日本人の発酵文化の知恵が重なり合う、深い物語があります。
精進料理とは
精進料理とは、仏教の戒律に基づき、肉や魚を使わない「植物性中心」の料理です。
その歴史は古く、奈良時代に仏教が伝来した際、僧侶たちの食事として始まりました。
修行の一環である食事には、「殺生をしない」「無駄を出さない」「素材の持ち味を活かす」といった思想が貫かれています。
しかし、動物性の食材を使わずに、どうやって味に深みを出すのか。
ここで重要な役割を果たしたのが、「発酵食品」だったのです。
味噌の役割は「うま味」と「命の循環」
精進料理において味噌が使われる最大の理由は、うま味の豊かさ。
肉や魚を使えない中、植物由来の材料で「満足感のある味」を作るのは難題でした。
ところが、味噌には「大豆のたんぱく質+麹菌の酵素+塩」の絶妙なバランスによって、自然な甘味やコク、そして深いうま味が生まれます。

たとえば、
・味噌汁は昆布や干し椎茸のだしと合わせて、胃にやさしくも滋養豊かに
・味噌炒めは、ごま油と味噌でごはんに合う濃厚な味に
・味噌漬けは、大根や豆腐の保存食として
さらに味噌は、「生きた菌」を含む発酵食品。
「命を奪わず、命を育む」という点においても、仏教の精神と調和しているのです。
禅寺で育まれた「味噌の知恵」
味噌が精進料理で特に重要視されるようになった背景には、禅宗の影響があります。
鎌倉時代に中国から禅宗が伝来すると、厳しい修行を支えるための食事として、滋養に富んだ味噌汁が取り入れられました。
有名なのが、禅宗の開祖・道元が記した『典座教訓(てんぞきょうくん)』。
これは、修行僧の食事を作る係(=典座)が守るべき心構えや作法を記した書物ですが、そこにも味噌や発酵調味料の扱いが登場します。
「食事は修行の一部。真心を込めて作ること」
「豆腐や味噌、漬物も粗末に扱ってはならない」
「余った味噌は無駄にせず、次の食事に活かす」
こうした精神は、現代の料理人たちにも影響を与えており、精進料理が「ただのベジタリアン食」にとどまらない奥深さを持つ理由でもあります。
現代に受け継がれる「味噌の精進力」

現代の日本でも、精進料理はお寺の食事だけでなく、健康志向の人や、ヴィーガン・ベジタリアンに注目されるようになっています。
食事制限がある人でも安心して使うことができ、整腸効果もばっちり。
しかも保存性が高く、非常食やキャンプ食にも最適です。
さらに最近では、「手作り味噌」や「寺院味噌」といった、伝統を感じさせる商品も人気。
これらは、寺で昔ながらの製法を守って作られたもので、自然の菌が育む、まさに「生きている味噌」と言えます。
「体にいいから食べる」だけでなく、「感謝と祈りを込めていただく」という視点を味噌が思い出させてくれるのです。
商品紹介

手づくり糀ぎょうさん 生みそ 500g
手作り米こうじ(国産米)・大豆北海道産鶴娘使用・手づくり糀と上質な大豆を使用しています。無添加で塩分控えめの天然仕込の生味噌です。甘みがあり、味噌汁だけでなく白身の魚や豚肉にからめ、炒めても美味しくお召し上がりいただけます。(塩分6%)
 
         
 








