「味噌」のルーツをたどる旅

ごはんに味噌汁、焼き魚に味噌漬け、野菜スティックに味噌ディップ…。
私たちの食卓に欠かせない「味噌」は、まさに“日本の味”といっても過言ではありません。けれども、味噌がいつから、どのように日本の食文化に根づいてきたのかは、意外と知られていないのではないでしょうか。
今回は、味噌の起源から現代までをたどる「日本人と味噌の千年史」。
“味噌の歴史旅”に一緒に出かけてみませんか?

発酵大国ニッポンと味噌の歴史

① 味噌の祖先は中国からやってきた?

味噌のルーツをさかのぼると、紀元前の中国にたどり着きます。
当時、中国では「醤(ひしお)」と呼ばれる、穀物や豆を塩とともに発酵させた調味料が作られていました。
これが、のちの味噌や醤油の原型といわれています。
やがてこの醤が、日本にも伝わったと考えられており、奈良時代の文献にも「未醤(みしょう)」という言葉が登場します。
これは、まさに味噌の古語。
つまり、日本ではすでに1300年以上前から味噌のような発酵食品が親しまれていたのです。

②平安時代の貴族も味噌を食べていた?

平安時代になると、味噌は「高級調味料」として貴族の食卓に登場します。
ただし、現代のように「溶いて使う味噌汁」ではなく、「そのまま食べるおかず」としての使われ方が主流でした。
いわば、塩辛や珍味のような位置づけです。
たとえば、現代でも残る「なめ味噌」や「焼き味噌」などがその名残。
味噌が貴重だった当時、少量でもごはんが進む「旨みの塊」として重宝されていたのでしょう。

③戦国時代、味噌は“戦の武器”だった!

味噌が一気に庶民の間に広まるきっかけとなったのが、戦国時代。
武将たちは、戦に出る際に保存性の高い味噌を大量に持ち込み、携帯食・栄養源として活用していました。
とくに有名なのが、あの武田信玄。
彼は「信玄味噌」と呼ばれる味噌を戦陣に携え、兵士たちの体力管理に役立てたといいます。
味噌はたんぱく質・ミネラル・塩分を含むうえ、保存も効くスーパーフード。
栄養補給とともに、ほっと心を落ち着かせる“戦のごちそう”だったのかもしれません。

④江戸時代、各地で個性派味噌が誕生!

江戸時代になると、味噌づくりはさらに全国に広がり、各地の風土に根ざした「ご当地味噌」が登場します。

名古屋の「八丁味噌」
大豆と塩のみで作る、濃厚でコク深い赤味噌。

京都の「白味噌」
米麹を多く使い、甘くまろやかな風味。

九州の「麦味噌」
麦麹が生み出す香ばしさとやさしい甘さ。

これらの味噌は、地域の気候や水質、作物の違いなどによって進化してきました。
まさに、日本は全国が“味噌文化のミュージアム”のようなものなのかもしれませんね。

⑤明治〜現代、工業化と家庭の味へ

明治時代に入ると、味噌づくりも次第に機械化が進みます。
それまで各家庭で手づくりしていた味噌は、味噌屋で買う“商品”となり、戦後にはスーパーで手軽に手に入るものへと変わっていきました。
一方で、昭和〜平成にかけては洋食化の波により、味噌の消費量が減少。
朝食がパン中心になる家庭も増え、「味噌汁離れ」が進んだとも言われています。
しかし、近年は健康志向や発酵食ブーム、腸活などの流行を背景に、味噌が再注目。
手づくり味噌教室や「味噌玉」の流行もその一例です。

1000年かけて「おふくろの味」に

こうして見ると、味噌はただの調味料ではなく、時代や人々の暮らしとともに変化してきた“生きた文化”そのもの。
かつて貴族が大事に味わった味噌は、戦国の兵士の命を支え、江戸の庶民の台所に根づき、今や「おふくろの味」として多くの人の記憶に残る存在となったのです。


近年では、海外でも“MISO”として味噌が注目され、ビーガン料理や発酵レストランなどで使われるケースも増えています。
また、味噌のプロバイオティクス(善玉菌)や発酵パワーに着目した研究も進み、「未来の健康食品」としてのポジションを確立しつつあります。
味噌は、過去から未来へと続く「日本人の知恵」の結晶。
その一杯の味噌汁の奥には、千年の物語が込められているのです。

商品ページ

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